院長のぐぶやき「しくれのんどりーむ」

青春の1ページ。

2013年8月24日 |

高校 1年生の男の子がいました。父親は、高校教師でしつけが厳しく、息子が高校に入学しても髪を伸ばすことを認めてくれません、当然、丸刈り。兵庫県城崎郡日高町、神鍋山スキー場がある、人口2万弱の小さな町。田んぼの中の、だだっ広い家に住んでいました。よく凧揚げをしました。空を見上げると、絶滅直前のコウノトリが時々、飛んでいました。小学校・中学校の授業で、コウノトリのためにドジョウ取りをしていた頃、テレビ 8チャンネルで午後10時から「夜のヒットスタジオ」をやっていた頃。ひとりの18歳の暗い憂いを含んだ女の子が演歌でデビューしました。きれいな顔をしていましたが、しわがれたハスキーボイス。笑顔をほとんどみせず、この世の不幸をすべて背負ったような暗い顔をして、絞り出すように歌う少女。「あたしがおとこに生まれたら~、あたしは女を捨てないわ~、ネオン暮らしの女には~、優しい言葉がしみたのよ~、バカだな~、バカだな~、騙されちゃって~、夜が冷たいシ・ン・ジュ・クのお~ん、な~・・・・」。うぶな男の子は、ブラウン管に映し出されたしわがれ声の女の子に惹かれていきました。歌詞の意味などわからないままに、その雰囲気に惹かれていきます。豊岡市のレコード店で買ってきた、その女の子の大きなブロマイドを8帖部屋の天井に貼り付けました。お布団を敷いて寝ころぶと、その女の子のブロマイドが真正面に見えます。毎日毎日、飽きもせず、その女の子のブロマイドを眺めて眠りに入っていきました。自分にない、何かを持った女性、自分の知らない未知の世界を知っている女性。何か強く惹きつけるものがありました。「紅く咲くのはケシの花、白く咲くのは百合の花~、どう咲きゃいいのさ、このあたし~、夢は夜ひ~ら・く~・・・・・」。一時期、高校生の男の子の心をほとんど占めていた女の子。その後、高校生の男の子の心を占めるようになったのは「オートバイ」と「ザ・ビートルズ」、あ~、これが青春(吉田拓郎の声で?)。

  8月22日午前7時頃、東京都新宿区のマンション前の路上で歌手・藤圭子(62歳)が倒れているのが見つかり、通報で病院に搬送されたが、死亡が確認された。警視庁新宿署は飛び降り自殺とみて調査中である。彼女は、私の青春の一部である。44年経った今でも、田舎の実家の私の部屋(南の離れの 2階)の天井に彼女はいます。今は使われていないその部屋の障子には、ジョン・レノンのブロマイドが張られたままになっています。

    8月23日(金)開院第11診察日。午前中、再診で訪れた女性患者さまに「自立支援医療」のお話をしました。病院勤めをしていた頃は、こういう話はすべて事務スタッフ任せでしたが、メンタルクリニックの院長になると私がお話をしなければなりません。「あなたが、うえさかメンタルクリニックで新規申請する最初の方です」と前置きして、申請の仕方を受付スタッフと共に説明します。おおざっぱに説明した後、東灘区役所保険福祉部あんしんすこやか係に電話をかけて戴きました。「はい、印鑑を持って行くんですね」と女性。その後、すみやかに東灘区役所に行き新規申請手続きをして戴きました。午後 3時30分頃、その女性患者さまが、クリニックに来て下さり、どのような手続きをして、どのように担当者から言われたか、教えて下さいました(実は、教えてくださいとお願いしていたのです、すみません)。クリニックを開院すると、患者さまから教えていただくことが多々あります。出来るだけご迷惑をおかけしないようにしますから、これからも教えて下さいね、お願いいたします。

    午後7時50分頃、クリニックの電燈を消して裏の通用口から出ます。マンション正面出入り口から出ると、小雨がパラパラ。そんなに濡れそうになかったので、傘がないまま、歩いて車を月極め駐車している御影クラッセへ向かおうと数歩、歩いたところで、暗闇の中、傘をさして、うえさかメンタルクリニックのシャッターに書かれた診療時間を眺めている清楚な若い女性の姿に気付きました。声をかけます「あの~、診察をご希望ですか?」。女性「・・・・・・先生ですか」。私「はい、うえさかメンタルクリニックの医師ですが」。女性(安堵の表情を浮かべて)「・・・・・私、〇〇診療所にかかっているんですが・・・どうも△▽先生と合わなくて・・・・」。私「自立支援医療を受けていらっしゃいますか?」。女性(困惑の表情を浮かべて)「はい受けています・・・・・、別のクリニックに移るのは良くないのでしょうか?」。う~ん、困った。律儀な私としては、むやみに患者さまを引っ張れない・・・・・困った。・・・・(後は、さすがにディスクロージャー植坂でも、書けません、失礼します)。

Cyclennon Point : 3(0)     130823      Heart  & Romanticism   By  CyclennonDream        最近、趣味がひとつ増えました。ラミネーターでA4版の資料を作製すること。こうしておけば、水に濡れても大丈夫だし、資料の保存ができるし・・・・いいですね。ラミネーターをいじることで、患者さまがいなくて寂しい、その負のストレスを、すこし晴らせる気がします。でもね、患者さまが来なくて、寂しいけれど、私は、それなりに充実した日々を送っているんですよ。

 

   

  

 

 

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