Leo Leonni 作 『スイミー』 訳 谷川俊太郎
ひろい海のどこかに、小さな魚のきょうだいたちが、たのしくくらしてた。
みんなあかいのに、一ぴきだけはからすがいよりもまっくろ。
でも、およぐのはだれよりもはやかった。
名まえは、スイミー。
ところが、あるひ、おそろしいまぐろが、おなかをすかせて、すごいはやさで、ミサイルみたいにつっこんできた。
ひとくちで、まぐろは、小さなあかい魚たちを一ぴきのこらずのみこんだ。
にげたのは、スイミーだけ。
スイミーは泳いだ ふかいうみのそこを。
こわかった さびしかった とてもかなしかった。
けれど、うみにはすばらしいものがいっぱいあった そして、おもしろいものをみるたびに スイミーは だんだん元気をとりもどした。
にじいろのゼリーのようなくらげをみた。
水中ブルドーザーみたいな いせえび。
見たこともない魚たち。見えない糸でひっぱられている。
ドロップみたいな岩からはえてる こんぶや わかめの はやし。
うなぎ。しっぽがひじょうに長いので、顔をわすれてしまうほどだ。
そして、風にゆれるももいろのやしきみたいな いそぎんちゃく。
そのとき、岩かげにスイミーは、見つけた。
スイミーとそっくりの、小さな魚のきょうだいたち。
「出て来いよ、みんなであそぼう。おもしろいものがいっぱいだよ」
「だめだよ。」
「だけど、いつまでもそこにじっとしているわけには、いかないよ。なんとか考えなくちゃ。」
スイミーは、かんがえた。
いろいろかんがえた。
うんとかんがえた。
それから、とつぜん、スイミーはさけんだ。 「そうだ。」
「みんないっしょに泳ぐんだ。 海でいちばん大きな魚のふりをして。」
スイミーは、おしえた。
「けっして はなればなれにならないこと」 「みんなもちばをまもること」
みんなが、一匹の大きな魚みたいに泳げるようになったとき、スイミーは言った。
「ぼくが、みんなの目になろう」
あさの冷たい水の中を、ひるのかがやく光のなかを みんなはおよぎ、大きな魚を追い出した。
完
K.T.女史から、詩が書かれた冊子を戴きました。開くと絵本になっています。手作りの絵本です。これは面白い、大切にいたします。
「ルービック・阪急電車7000系・立体パズル」にスイミーと名付けました。2台所有していますから「スイミー 1号」と「スイミー2号」です。
スイミー1号、スイミー2号と戯れることが、私の日課になりました。そうとう習熟しましたよ。だれにも負けませんよ。